表装依頼されるお客様へ

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表装作業中、作品に水を打ちますと墨が滲む事故が希にあります。いろいろお聞きして原因と思われることのいくつかを、ご参考にして頂きたく、列記いたしました。また、当社の技術では満足のいく解決ができない部分もいくつかありますので、その部分も列記しておきました。
当、鵞毛堂掛軸工房ではお客様に喜んでいただけるような作品作りを目指して、日々努力しておりますが皆様のご協力ご指導なくしての発展はありません。作品に対してご意見,ご不満等があればご遠慮なくお聞かせ頂きたく、お願い致します。

  • 墨を磨って長時間(条件によりますが3~6時間くらい)たった墨をご使用の方。
    この墨液を「宿墨」と云い膠の煤に対する粘着力が弱って分離したり沈殿したりします。当然煤を紙に接着する力も弱くなっており水をかけると煤が流れてしまいます。
  • 筆立てやキャップをご使用の方。
    筆立てやキャップをご使用されていますと中で宿墨が出来ています。ご使用の方はこの用具をこまめに洗ってください。
  • 墨かすが付いている筆をご使用の方。
    墨かすは使用中に溶け出して宿墨となります。捌き筆は墨かすを残さないように良く洗ってください。固め筆は最後に反古紙で丁寧に拭き取ってください。
  • 墨かすがついた硯をご使用の方。
    墨かすが溶け出して宿墨となります。 使用後は洗って下さい。
  • 超濃墨を使用した作品。
    磨墨を使用している場合は良いのですが、液体墨の場合乾燥が遅い場合があり、そのまま表装に出されますと溶け出すことがあります。表面は乾いていても意外と中まで乾いてない場合が多いようです。
  • 液墨をよく振らないで書いた作品。
    液体墨も沈殿します。ご使用前には良く振ってお使いください。
  • 使用期限を過ぎた液墨をご使用の方。
    お買い上げ2年ほどは大丈夫ですが念のためです。
  • 作品を乾燥させる時下に貼りついた作品。
    作品が下に貼りついたまま乾燥させ(生乾きでもだめです)剥がしますと裏面の膠の膜がはがれ水を打つと煤が流れ出ます。文字の表面(裏も)には薄い膠の膜があるようです。
  • 用紙を二枚重ねで書いた作品。
    前記と同じ理由です。書きあがったらすぐに反古紙を分離して乾燥させてください。
  • 二層三層紙作品を剥して軸装するとき。
    前記と同じ理由ですが、ある程度は当社の技術で解決できます。しかし前記のそれぞれの場合は作品を見ても分からない為、事前に処置をほどこすことが出来ません。
  • 淡墨専用液墨を説明書の指示とおりに薄めないで使用した場合 膠と煤の配合がくずれて紙への定着力が弱まり、煤が流れ出します。
  • 軸装に出来ない紙
    「洋紙」と「厚漉き」の紙は、軸装に出来ない場合があります。無理に軸装にしますと巻き上げたとき皺が出来ます。紙を選ぶときは仕立ての形態を考慮する必要があります。

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