墨の取り扱いと液墨について

墨のすり方

  • 水を丘にたらし“の”という字を書くように磨り、よく磨れたら(濃墨)海へ溜めます。これをくりかえして必要量を作ります。濃度の調整は加水することで調整します。淡墨を作るのも濃墨をうすめるようにします。
  • 海に水を溜めて墨でかき出しながら磨りますと余計な水分が付着して写真のようにひび割れをおこします。
  • 磨墨面は平らでもⅤ字形でもよいですが時々裏返して磨ってください。
  • 墨を磨り終った後は、墨の磨り口についた水気をすぐにティッシュなどで、よく拭きとって保存してください。
  • 磨った墨は腐りやすいですから、出来るだけ早く使い切るようにして下さい。(2 時間ほどで宿墨になります。)
  • 墨は直射日光に当たるところやストーブの前や、エアコンの風があたるところ、湿気の多いところには置かないでください。
    ※使用後の硯はよく洗ってください。墨かすが残っているとすぐに宿墨になります。


保存の仕方

温度湿度の急激な変化を嫌いますので、理想的には桐箱に入れ冷暗所に保管するのが一番良いのですが、和墨はそれほど気を使う必要はないと思います。しかし唐墨は湿気には特に注意が必要で、磨墨面以外、水気が付着するのは最小限にしてください。特に注意していただきたいのは硯箱を使用している方で、中に水の入れた水滴や、残った墨液をそのままや、ぬらした大筆をいっしょに、墨を入れたまま蓋をしますと、墨は湿気を吸って柔らかくなったり、割れたりしてだめになってしまいます。

和墨と唐墨の違い

日本と中国では季節の変化や、年間を通しての温度湿度が違います。その土地の風土に合わせた仕様で作られていますので、唐墨の取り扱いには注意が必要です。日本製は湿度の変化に耐えられるように作られていますが、中国製は温度の変化には強くできていますが、湿度の変化には弱く出来ています。急激な湿度の変化を与えますと、多数に割れたり、表面に細かいひびわれができます。墨のすり方や保存の仕方には前記の注意を守ってください。

宿墨

墨は、膠と煤を原料に作られています。煤の粒子が膠に包まれている状態で、膠が接着剤の役目をして、煤を紙の繊維に固着させます。したがって膠の接着力が弱くなると煤を紙の繊維に固着させることが出来なくなり、煤は紙に乗っているような状態になります。この墨液を「 宿墨」と称し、この墨液で書いた作品に、水を打ちますと、文字(煤)が流れてしまいます。
磨った墨液は 1 つの目安として2時間以内に使い切るようにして下さい。磨った墨液は長時間たつと宿墨となり表具の出来ない墨になります。作品を表装する方は注意が必要です。また、宿墨は磨って長時間たっただけではなく、表面が乾燥した場合や、すり口のひび割れた墨、硯にこびりついた墨を溶かした場合、墨カスの付いた筆、洗わない筆立に挿したままの筆からも、宿墨は出来ます。
液体墨と磨墨液を混ぜて使用する混合墨液も注意が必要です。時間がたった混合墨液は捨ててください。

液体墨で作品を書かれるお客様へ

液体墨製品を使用して書かれた作品は、固形墨を磨り下ろした墨液で書いた作品より、表装をするとき滲みによる事故が時々あります。
下記にご注意いただくと表装時、水をかけると滲んだり流れたりする事故を、減らせると思いますので考慮のほどよろしくお願いします。

  • 使用後の残り墨液を容器に戻さないこと。不純物が入ると沈殿分離、腐敗します。
  • 必要量以上を、硯、塁池に出さないこと長時間空気にさらすことによる表面からの変質を防ぎます。特に乾燥時(部屋の湿度が低いとき)には変質が早いので、目安ですが、容器から出したら 1 時間ほどで使い切るようにして下さい
  • 使用説明書は必ずお読み下さい。
    製品によって特徴や用法に違いがあります。特に淡墨用、超濃墨用、練り墨は要注意です。用法以外の使用は避けてください。
  • 液体墨は固形墨より、乾きが遅い性質があります。
    作品は十分に乾燥してから表装を依頼して頂けると事故を防げます。濃墨、超濃墨の作品は特に注意して下さい。
  • 「染料系墨液」は表装には向きません。
    表装のとき水を使用すると染料は流れますし、退色して色が褪せます。液体墨は、墨の専業メーカ一の品で、作品目的に合わせた製品を、お選び下さい。
  • 宿墨に注意。
    液体墨に固形墨を混ぜ合わせた場合は、宿墨も始まります。短時間で使い切るようにして下さい。

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